雪による立ち往生の先頭は誰だ?
ここ最近冬になると、雪道で車が立ち往生してしまう、という状況が頻繁に報告されるようになりました。各自治体では対応できず、自衛隊に救助を求める事態にまで発展しています。この事態は、異常気象による豪雪が大きな理由とされています。しかし、昔から豪雪と言われている地域では、このような類いの交通障害がそれ程報告されることはありません。
除雪の体制が出来ている
私は宮城県在住ですが、以前タンクローリーの運転手を10年ほどしていました。宮城県はそれ程雪は降りませんが、配送区域である山形県は隠れた豪雪地域が結構あります。先日も最上郡の肘折が頻繁に紹介されていました。山形県は、除雪の体制がしっかりとしています。狭い豪雪地域、例えば米沢地区などでは、除雪はもちろんですが、寄せた雪を集めて捨て場まで運ぶ「排雪」の仕組みが完璧に出来上がっています。宮城県と山形県を結ぶ国道は峠道で、何本かあるのですが、それらの国道は除雪の体制が完璧に整っていますし、融雪剤の散布も必ず行われます。このように、雪が降っても大丈夫なように自治体が完璧に除雪を行う体制が取られていたとしても、人間が重機を使って雪を処理する量には限度があります。
考えられない程の降雪量
いくら体制が整っていても、雪の降る量が「今までに経験したことがない程に」多ければ、道路には一瞬にして雪が降り積もってしまいます。そのような状況の中で、一番早く動けなくなってしまうのがトラックです。普通タイヤ、ノーマルタイヤでは話になりません。例えスタッドレスタイヤを履いていようが、荷物を積んでいようが、勢いよく降り続ける雪には、到底太刀打ちできません。スリップし、動けなくなり、タイヤチェーンを巻き、動くことができればいいのですが、タイヤチェーンを巻いても動けない事もあります。
軽量化
今の時代の車は全般的に軽量化されています。トラックも同様です。例えば私が仕事をしていたタンクローリーの場合、油を積むタンクの部分がアルミで出来ているものが殆どです。以前はスチール製、鉄製のものが殆どでしたので、荷物を積んでいなくてもそこそこの重量があり、雪道でもそれなりに走ることができたのですが、現在のアルミのタンクはとても軽いので、単車で空になってしまうと、殆ど後輪に加重がかからないため、雪道の走行が難しくなっています。全てのトラックで、この傾向はあります。
雪道に慣れていない
このように言われることがありますが、私は慣れていない人ほど慎重になると思っています。慣れていないなら気象情報をチェックするでしょうし、慣れていないなら、タイヤチェーンを何セットかきちんと携行するでしょう。慣れていないなら、早めにタイヤチェーンを装着すると思うのです。むしろ危ないのは、慣れている人と、なるようになると開き直ってしまっている、ちょっと慣れた人たち、なのかもしれません。
理由は様々
トラックが雪道で止まってしまう、坂を登り切れないで立ち往生してしまう理由は沢山あります。どうしてチェーンを巻かないんだ、という方がいらっしゃるかもしれませんが、立ち往生してしまうような状況の中では、止まってタイヤチェーンを巻く事の方が危険な場合もあります。国道によっては、駐車スペースがないかもしれませんし、駐車スペースが既に積雪でどうにもならないケースもあります。仮にタイヤチェーンを巻くためにパーキングに入っても、止まったら最後、タイヤチェーンを巻こうが何をしようが出ることができない、そんな事もあるでしょう。
状況を把握する
今はライブカメラなども発達していて、各国道の峠筋の路面状況をチェックできる体制が整っている地域が数多くあります。このようなシステムを積極的に利用するといいでしょう。そして、常に気象情報をチェックし、その中で例えば「猛烈な寒波が来ていて、降雪が多い、立ち往生などの状況が発生するかもしれない」というような情報が出たなら、勇気を持って運行を停止することです。おそらく日本人は仕事に対する責任感が強いので、これは無理だと思いますが、思うだけでもまずは、はじめてみて下さい。
結論
トラックはその大きさゆえ、動かすためには膨大なエネルギーを必要とします。そのエネルギーは、大きなエンジンで発生し、大きなタイヤから強い力で路面に伝えられ、そしてようやくトラックが動き出します。この、タイヤと路面の摩擦は、乗用車の非ではありません。必然的に、スリップしやすい、立ち往生してしまう、などの状況となりやすいのです。いくら気をつけていても、例えばタイヤチェーンを携行し、装着していても、峠道でどうにもならないというこのレベルの降雪量が一気に来てしまうとお手上げです。大型車が雪道で立ち往生してしまう理由を、運行を担っている会社やドライバーの責任と言うのは簡単です。実際にそうだからです。でもそれ以前に、この状況を作り出している原因は何なのかを考えてみましょう。地球の温暖化が進み、地球の機能が毎年少しずつおかしくなっていることを個人レベルで認識してみて下さい。その上で、地球規模で進む温暖化を少しでも食い止めるために、我々一人一人に何ができるのかを考えて、今すぐにできる簡単なことから実行してみましょう。