10万キロ超えると下取りはない?
新しい車を検討するのに、今の車がどの位の価格で引き取ってもらえるのかを知ることはとても大切ですよね。今の車を高く引き取ってもらうことができれば、もっといいグレード、車種がターゲットに入ってきます。でも、自分の今の車に落ち度がある場合はちょっと深刻です。10万キロも走ってしまうと、下取りなんかしてもらえないんじゃないか、と思っている方、多いようですね。都内某自動車ディーラーに12年勤務し、現場も本社勤務も経験して来た私が、ディーラーサイドから見た本音をお伝えします。もしかするとあなたのお役に立てるかもしれませんので、よろしくお願いいたします。
日本人の悪いクセ
この問題は、日本人の特徴を考えると結論を出すことができます。グローバルな視点、世界から見ると、日本はいろいろな場面で几帳面さがにじみ出ている国家です。電車が3分おきにきちんとホームに来るとか、街を歩いていてもゴミが一つも落ちていないとか、例え震災時でも、何の指導もされないのに列を乱さずに整列することができるとか、これらは世界から見るなら、日本人の驚くべき素質です。これらは世界から褒めてもらえる嬉しい事柄ですが、一方で方向を間違え、ちょっと難しい問題も発生させています。ストイックな消費期限は沢山の食品ロスを生んでいますし、親切を行き過ぎた細かすぎる表示が、デザインを邪魔して商品の価値を下げてしまう場合もあります。ほんの数十年前まで、長い間人間と同居してきた菌をわざわざ殺してしまっている結果、人間の耐性が落ちて原因不明の病気の原因になっているとかいないとか、などなど、私たち日本人は、世界的に見て少しだけ神経質な面があります。車の価値観においてもこれは同様です。
日本の車は綺麗で程度がイイ
日本の主要道路、車が頻繁に走る道路は殆ど舗装されていますが、発展途上国では、まだまだ舗装されていない道が沢山あります。日本の車は、例え距離を走っていても傷みが少ないのですね。海外で活躍している車を見ると、日本の道路を走っている車のように程度のよい車ばかりではなく、日本では解体処分されてしまうような程度の車が、大切に、現役で活躍しているのを目にします。また、日本でかつて使われていた看板(屋号などのロゴ)付きの車が、消されることなく、そのまま海外で活躍している、という話題を聞いたことがあるかたもいらっしゃると思います。日本語の看板があるということは、日本で使われていた車ということで、すなわち、程度が良い車というイメージが海外市場では定着しています。日本の車は綺麗で程度が良いと、海外では評判です。
走行距離に対する私たち日本人の誤解
少し言葉が悪くて恐縮ですが、私たち日本人は、車を維持していく上で、無意識のうちに様々な情報を刷り込まれてしまっています。これは、日本で車を維持していくためには避けて通れない、車検制度というシステムが大いに関係しています。車検制度は私たちユーザーに対して、新しい車への買い替えを強く勧めるこれ以上ない方法です。「間もなく車検ですので、新しい車に買い替えませんか?」「次回の車検は費用もかさむので、車検前での買い替えをお勧めします」「今なら50万円で下取りさせていただきますが、車検を取ってしまうと、車検費用を上乗せする事はできなくなります。車検前の今が、一番高くお引き取りできるチャンスです」などなど、車検に絡めて新しい車を訴求する事がいくらでもできます。10万キロが近づいている車だと、車検時にウォーターポンプとタイミングベルトの取り換えを勧められます。これは義務ではありませんが、万が一タイミングベルトが切れたり、ウォーターポンプが壊れたりしてしまうと、最悪の場合、その場で動けなくなってレッカー移動というシナリオが待っていますので、これを防ぐために10万キロ前の車検ではタイミングベルトとウォーターポンプの取り換えが奨励され、必然的に車検費用が高くなるという現実があります。この見積もりから、何故か私たちは、10万キロを超えると車は壊れやすくなり、価値が下がる、と思ってしまっているのです。実際にはきちんと整備をすれば、まだまだ使える状態であるのにもかかわらず。
ディーラーの高値下取り条件は 再販可能なこと
ディーラーは、新車を売るためにお店を構えています。ぶっちゃけた話、新車が販売できるなら、下取りはあってもなくてもどうでもいいのです。どうでもいいと言ってしまうと弊害がありますが、唯一価格を上げてもらえる条件は、ディーラーの中古車部門で再販が可能なこと。今人気の車であるとか、走行距離が少ないとか、季節的な事柄も含めての売れ筋だとか、様々な要因で「再販可能か」が判断されます。しかし、ディーラー直営の中古車のマイカーセンターにおいて、10万キロ走行の車が展示場で販売されるケースは殆どないのが現実です。また、ディーラーは独自の査定基準で、下取り車の下取り価格を算出しています。その方法は、独自の基準価格を元に走行距離の伸びや傷の有無、車検残などを加減点するのですが、10万キロを超えてしまうと、その減点も大きくなりますので、例え高年式で人気車種であっても、査定価格が低くなってしまうのが現実です。このように、走行距離が10万キロを超えてしまうと、格段に下取り価格には影響が出てしまうのですね。
下取りに出した次はどうなる?
仮にあなたがディーラー提示の下取り価格で下取りに出し、所定の手数料も払って、納車時に新しい車と引き換えたとしましょう。あなたの車はどうなると思いますか?まず、引き取りをした時点で新車営業サイドから、タイアップしている中古車センターの責任者へ連絡が入ります。「昭和61年前期もののマークⅡGX71-XTPQE ただグランデの白の12万キロだけど、車検半年残で、すんなり傷もなくてきれいだけどいる?純正アルミも履いてるよ」「昭和?古すぎるね、解体して。いや、ちょっとまって。旧車ブーム来てて売れそうだから、もらうよ」と、こんなやり取りがあり、市場と車の状態を判断して、マイカーセンター長が入庫するか解体するかを決めます。今回のように、マイカーセンター内では再販が難しくても、中古車市場で引き合いがありそうな場合は、業者へ業販という形で販売されます。この車は旧車ブームもあり、小売価格で100万円位で販売されています。とある業者に60万円でどうかと話をすると、見事制約となりました。引き取り価格は車検残と自賠残で5000円でしたから、49万5千円の儲けです。センター長、お見事!
やられないためには?
距離が走っているからといって、売れない理由にはなりません。走行距離のデメリット以上に、あなたの車に価値が見いだされれば、車は簡単に売れます。このケースでは、あなたが直接、49万5千円で販売することもできたのです。ただしこれは解りやすい車種と価格例を出していますので、実際の相場とは違いがありますが、可能性はゼロではありません。あなたはどうすれば、この業販価格をゲットできたのでしょうか?それは、業者間であなたの車のセリをする「一括査定」をすればよかったのです。でも、注意して下さい。一括査定では、車種と程度で、オークションの落札相場から、おおよその最高値があらかじめわかってしまっています。各業者はその最高値から、どれだけの儲けを得るかでの競争となります。最高値を得るには、徹底して競争させて下さい。具体的には、業者が「限界だ」「勘弁して下さい」「それはあり得ません」などのネガティブワードと共に、若干感情的になって来るまで粘る事です。たとえ10万キロ走っていても、あなたの車は輸出すれば世界中に活躍の場があります。是非とも、こちらで価格を一度聞いてみて下さい。
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