ダンプカーの運転手が楽ではない理由【運転手の現実問題】

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ダンプの運転手

ダンプの運転手にあこがれているあなた、運送業経営者の方へ

 このストレス社会にうんざりしている人、もしかすると運転手に転職したいと考えている方も多いのではないでしょうか。また、運送業を経営なさっていて、運転手が集まらない、すぐに辞めてしまう、求人をかけても全く反応がない、と悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。こちらのコーナーでは、現役大型運転手の私がこれまでに経験してきた、運転手が今勤めている運送屋さんを嫌になってしまうケースや、運転手が転職を考えるケースなど、実際にこの目で見てきた状況を赤裸々にお話できればと思っています。運転手を職業として考えている方には、少し強烈な印象があるかもしれませんが、これが運転手の現実です。また、運転手は会社の状況を、思った以上に繊細に感じています。情報が周囲から入ってくる場合もよくあります。経営者の方であれば、あなたの会社が今置かれている状況は、全て運転手に伝わっていると思った方がいいかもしれません。

ダンプの運転手は楽じゃない

 「ダンプの運転手は楽だ」とよく言われます。これは、ある意味正解ですが、厳密に言えばとんでもない間違いです。運送業は荷物を運んでナンボの仕事ですから、荷物を運ぶ訳ですが、「荷物」に限って考えるならダンプは楽勝です。まれに、後ろの蓋を開けたまま走ってしまうとか、ダンプアップした荷台を降ろさずに走ってしまい、引っかけるとか、自動シートの収納が不完全なまま走ってしまうとかの事故がありますが、これらは運転手が注意をすることでほぼ防ぐことができます。荷物は簡単であるとしても、それ以外の部分がやっかいです。

生活できない

 運転手と言ってもいろいろな種類の仕事があります。例えば、宅配便の運転手も運転手です。大手の宅配便は年中無休で営業していますよね。私たちは当たり前のようにそのサービスの恩恵を受けている訳ですが、このサービスが成立する裏には、カレンダーも日曜も、正月もGWも関係なく働き続けなければならない運転手がいるという現実があります。これは悪いと感じる人がいる一方で、とある見方から考えるなら、とてもうらやましい状況です。ダンプの運転手の仕事は、1日限りの仕事や、数日単位での仕事、その他にも、例えばですが、かつて話題になった「豊洲市場に盛り土をしましょう」ということになれば、数ヶ月という期間は仕事が保証されます。しかし、ダンプの仕事は限られています。宅配便の仕事のように年中無休で仕事があるわけではなく、社会情勢や様々な要因で仕事の量は変わります。私が働いているのは東日本大震災の復興事業関連の仕事が殆どですが、運転手の間では、これが終わったらどうしようという事が時々話題になります。仕事が安定してあればいいのですが、このように、地域ごとでもその限られている仕事を入札で取り合いしているのが現実です。ですから、会社によって仕事が薄い、あるいは仕事がない、という状況が発生します。日給月給の場合、仕事がなければ賃金はそれに比例して少なくなります。何とか人材を確保しようと、ある一定レベルの賃金を保証している会社であれば、経営が少しずつ苦しくなって行きます。はじめにお話した宅配便の仕事は、ある意味いい、というのはこのような観点からです。仕事がない状態も2-3日なら我慢できますが、一週間程度仕事ができないと、我々ダンプの運転手は精神的にかなりキツくなってきます。

壊れる

 道路には様々な年式のダンプカーが走っています。日本には車検制度がありますので、メンテナンスはきちんとされているはずですし、日本製のダンプトラックは性能が良いことで世界的にも有名ですが、それでも壊れます。私が経験した、あるいは目にした故障を挙げてみると、自動シートのヒューズ切れによる開閉不能、高速走行時、プロペラシャフトの脱落、ラジエーターホースからの水漏れ、ガラ運搬時、後蓋の破損、パワステ不良による突然の操車不能、エンジンの突然の停止、その後起動不能、バックギアに入らず動けなくなる、エンジンオイルの漏れ、オイルフィルターのパッキン装着、締め付け不良によるオイル漏れ、などがあります。パンク、バッテリー上がり、などは故障とは言えないと思いますが、ダンプトラックを動かしていれば時々あります。運行前、運行後の点検をきちんとする、法令で定められた三ヶ月点検をきちんとする、プロペラシャフトなども含め、各部位へのグリスアップを定期的に行う、などである程度は防げるとは思いますが、これらを完全に行うことができるのは、意識の高い会社の元で、意識の高い運転手が運行をしている場合のみです。例えば今の私の環境では、三ヶ月定期点検は実施されていません。運行前の点検はしていますが、水とオイルの量の点検、ナット類の締め付け、タイヤの空気圧、燈火類の点検をする程度です。私は歴史のある、コンプライアンスに厳しい会社に長い間在籍していたことから、運行前と運行後の点検がとても重要なことを身をもって理解していますが、運転職の経験がない方が携わっている場合、これも行わないで出発してしまう運転手も結構いるのが現実です。

人間関係

 運転の仕事は、一度車庫を出発してしまえば一人になれるからいい、という考え方があります。ある意味正解ですが、それは仕事にもよります。ダンプの運転手の場合は、何台かのチームになって仕事をする場合が多く、コミュニケーションがとても重要になります。ダンプカーの仕事に限って言うなら、この考え方は少し危険です。このような考え方で仕事をしようとするなら、チーム全体の輪を乱してしまう事になりかねません。ダンプカーの仕事では、まず、荷主がいます。そして、積み場があり、降ろし場、現場があります。荷主が大手であればあるほどコンプライアンスに厳しく、細かい指示が出されます。ダンプカーは簡単に走っていると思われがちですが、かなり細かな指示の元で運行しなければならない場合も多いのです。「刺さるからハンドル切るな」「プールにはきちんと入れ」「一般道に引っ張るな」「ヘルメット、寅チョッキ常時着用」いろいろとありますが、皆さんが思っている以上に、ダンプカーの運転手は気を遣って運行をしています。

傭車

 ダンプカーに限ったことではありませんが、会社が請け負った仕事に対して自社便が足りない場合、断るのではなくて、傭車を頼むことで解決を図ります。「あれこれ運送さんは今日、5台ですね」と言われて集まった現場に、自社便は1台、その他4台は傭車なんてこともあります。その傭車が更に傭車を使っていたり、更に更に傭車を使っていたり、かなり煩雑なチーム編成になる事がしょっちゅうです。頭になれば、その傭車をまとめて、仕事を指示しなければなりません。積み場、降ろし場、走るルート、荷主からの諸注意、昼休みなど、いろいろと指示をすることがありますので、傭車がらみの仕事だと本来の運行以外にもしなければならないことが沢山あり、かなり大変です。

結局、楽な仕事はない

 私も様々な職業を経験してきましたが、ダンプカーの運転手は楽な仕事とは思えません。むしろ、運転手の中では大変な部類に入ると思います。仕事の有無、将来性、得られる賃金、とりまく環境、人間関係、その他諸々を考えると、かなり大変な仕事です。走り始めると、トイレにも行けない事がよくあります。例え地理がわかっていても苦労するでしょう。傭車の人から前の日に打ち合わせの電話がかかってくることもよくあります。自分のプライベートの携帯電話の番号を、あちこちに知らせなければなりません。仕事がどうだ、あの人はこうだ、あの会社はどうだ、と、業界内はいつもいつも噂話で持ちきりです。「俺にはこれしかない」という状況なら仕方ありませんが、他の選択肢があるのなら、一度そちらをご検討された方がいいかもしれません。周囲の会社を見渡すと、ダンプカーの仕事の他に、メインの仕事を持っている会社を多く見かけます。食品の配送や建設関係、どこか大きな会社の専属として、他の仕事で入っているような会社もあります。一概には言い切れませんが、将来的な安定性を求めるなら、このような経営をしている会社をお選びいただくのが得策なのかもしれません。あくまでも私の所見ですので、一つの参考意見として捉えて頂ければ幸いに思います。

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