難しい問題
運転手をしていると、いろいろと難しい問題に遭遇する場合があります。こんなものは運転手サイドの問題ではありますが、運転を生業としている者にとっては、ちょっと考え込んでしまう事もあります。私が実際に経験した、これは難しい問題だ、と思った事例をお話します。
当時の生活はギリギリ
昔からそうですが、私の生活はギリギリです。何がギリギリかというと、時間的なものや体力的なものです。この話はタンクローリーの運転手時代に起こったものです。冬場、タンクローリーは燃料の配達が多くなり、繁忙期となります。ただでさえ目一杯の仕事内容なのに、高速の通行止めや寒気の襲来などで、配送も遅れ気味になる日々、睡眠は連日4時間眠れればいい方、というような生活が続きます。その日はこの勤務を4日こなした後の貴重な休みでした。私は当時からこのような副業をしており、休みの前日は夜中の3時位まで執筆やら何やらをするという生活をしていました。そしてようやく眠りについたと思った朝4時に、携帯電話が鳴りました。会社からで「今日は用事があるか?」とのことでした。聞けば同僚が出勤時に吹雪で車を田んぼに落としてしまい、どうしても仕事ができないので、代わりに出てもらえないか、との事でした。休みの日に仕事をするのは嫌でしたが、「とりあえず用事はない」と伝えると「ちょっとまだわからないけど、お願いするかもしれない、また連絡する」とのことでした。
一回だけお願いします
事故を起こした同僚の仕事は二回戦で、そのうちの一回だけをお願いしたい、と再び電話がかかってきました。一回目が私で、二回目はもう一人の休みの同僚、二人で一つの仕事をするような段取りでした。私は電話がきてもすぐには出勤できません。飯を食って風呂に入って弁当を持って、決まったルーティーンがありますので、これをしてから会社に出勤しました。私は殆ど睡眠を取らないまま、一回目の配送、とある運送屋からのオーダーである軽油18キロを積んで走り出しました。
走れるわけがない
ただでさえ短い睡眠が続いていて、今日はやっと休めると思っていたその日、布団に入ってすぐに起こされ、今から走ってくれと言われても、私は走れませんでした。眠くなったので、何度か仮眠を取りながら、ようやく配送先の運送屋にたどり着くと、お昼休み少し前になっていました。そこは、配送に関する道順や、注意事項が書かれた台帳のない、誰も行った事がない運送屋でしたので、私はそろそろとトレーラーで入って行き、雪の積もっている中、おろし場所の確認と、在庫(前尺)を見るためのマンホールがどこかを、確認しました。当日も雪がかなり降っており、確認は難儀しました。
社長らしき担当者が出てきた
私がそんな事をしている間に、社長らしき人が二階の事務所から降りてきました。開口一番「朝一番で頼んだのに、どうして来ないんだ!」と、怒られました。確かに配車は朝一番でしたが、やむを得ない事情でこの時間になった旨を説明しましたが、納得できない様子です。「どうしてなんだ、こっちだって段取りがあるんだ、同じ運送屋だろ、その位わかっているだろ、困るんだよ」と、更に怒り出しました。「私、実は今日は休みだったんです」と、のどあたりまで出かかりましたが、これはこちらの理由ですし、怒っている相手に言ったところで通用するものでもないと思ったので、言うのはやめ、ひたすら言われる事を聞き、謝りました。また、私が入って早々に事務所に行かなかったのも気に入らなかったようで、これも怒られました。これに関しては私も反省しましたが、台帳もありませんし、誰も行った事のない運送会社でしたので、私としても仕方ありませんでした。とにかく、こんなこと運転手の私に言っても仕方ないだろう、というような理不尽な事を、何度も何度もしつこく言われ、私はもう嫌になりました。
時々あること
今回は同僚が自家用車で不慮の事故を起こしてしまったということでしたが、これ以外にも、突然休ませてくれと電話をしてくる同僚もいました。これをする者は、何度も何度も同じことをします。また、配送の遅れに関しては、車両故障を起こしてしまう事もあります。過去には、配送運行中にドライブシャフトが落ちたとか、タイヤがパンクしたとか、事故をしてしまったとか、いろいろとあります。タンクローリーの場合は、精油所が製品的な問題で出荷を一時ストップする事もあります。お客様第一はわかっていますが、こればかりはどうにもなりません。
その後
その運送会社は、山を越えて、私たちの住むこちらの地域で仕事をしていることがよくありますが、この会社のトラックを見るたびにあの社長を思い出して嫌な気分になります。10年以上経過している今でも嫌になります。トラックに書かれているその会社のロゴを見ると、身体が反応してしまいます。会社の担当者が嫌な人だと、会社全体が嫌な会社だというイメージになってしまいます。時間厳守はわかりますが、仕事によってはどうにもならない場合もある事をご理解いただければと思います。